容姿・経歴・その他メモ

その少年・青年の身なりは平々凡々。平均的な身長に体重。染めた色の無い黒髪。
高校生らしい学ランに似合う、少年・青年イリーガル。
しかしその少年・青年の瞳は─────『虹色』だった。

少年・青年を一言で言い表すのであれば、『青空』であった。
澄んだ色をした蒼の世界に浮かび、そよぐ風に鼻歌を乗せるような、牧歌的な学生だ。
若い芽の生命を感じる大地に転がす石を一つ、手に取りながら慈しみを覚え、湖畔を見ては投げ打つ様と、広がる波紋を思い思いに浮かべた後に充足し、元の場所へ出来る限りに戻す。
その少年・青年が好むのは青であり、緑であり、白である。決して、赤でも無ければ、黄でも無ければ、黒でもない。
宇宙へ地続きする星の息吹に心地良さを覚え、それでいながらも鴎飛び交う人工物並ぶ港もまた、拠り所であり、居場所でもある。

人もまた、好んでいた。
十人十色という言葉は、人間という生物をよく言い表したものだと、少年・青年は述懐する。
商店街に構える、老舗と思わせる店の一つ、老境に差し掛かる妙齢の婦人が切盛りする光景や、河川の傍らに黄昏れる、縒れたシャツのサラリーマンに、地元の古い図書館に通い偶然出会う、眼鏡のよく似合ったクラスメイトの子。それら全てに対しても深い慈しみを覚えていた。

そして少年・青年は背教と出会った。
思巡らしの果てに、手に取った懐中電灯の照らす細道は─────『月桂樹』が咲いていた。

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