椎葉が覚醒した時の事件はUGNに資料が残っている。
覚醒時にエフェクトの制御を出来ずに身の回りのものを爆発させ、椎葉を助けようとした家族をも爆発させ、死亡させた。
身体が爆発しながらも母は椎葉を抱きしめて、言った。幸せになりなさいと。
UGNの職員が駆け付けた頃には家と家族を犠牲に爆発は収まっており、家族が死んだショックに絶叫する椎葉は彼のものではない指を一本だけ握りしめていた。それが椎葉にとっての”遺品”だった。


現在。椎葉はアカデミア島で学生として過ごしている。
しかしその表情に笑顔はない。不良のレッテルを貼られるようをそのままにし、誰とも関わることなく過ごそうとする椎葉に友人はいない。
その方が気楽でいいと考えている。
肉体の限界を越えたスピードは体を蝕む。誰かを庇えば当然痛いし爆発も加減を間違えれば腕が吹き飛ぶ。
愛し愛されていた家族を殺した者に、誰かに気をかけられる権利はない。
誰にとっても何者でないままにただこの命を捧げて、そして死んでいきたいから。