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"不夜の郭"カタスクニガイド

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製作時期
概要
効果

■不夜の郭カタスクニ

▼不夜の郭カタスクニ

「カネと度胸と命があれば、ここでやれない不道徳はないんだ」──娼館で迷宮探索の報酬を使い切ってしまい、正門から去ってゆく無名の冒険者の一言。

ケルディオン大陸の東方、鬱蒼とした山々の間に存在するカタスクニは、巨大な木造の迷宮〈黄泉の塔〉と、迷宮の封印を維持するための〈娼館〉群の二つを中心に発展した、五芒星型の都市です。カタスクニという名は、この地に伝わる民話の中の楽園に由来すると伝えられています。  城壁に囲まれた都市は中央の円形広場から五つの稜が放射状に伸びる独特な構造を持ち、各稜は行政、商業、歓楽、宗教、工房など明確な役割分担のもとに機能しています。  都市の背後に聳える〈黄泉の塔〉から湧き出す瘴気は、外界に広がると周辺を死の地に変えるため、実質的な都市の統治者である強大な魔術師、"陰陽頭"ヨモツシコメが中心となり封印を施して維持しています。  この封印の維持に定常的な魔力供給が必要なため、都市は供給の仕組みとして娼館や娯楽・交易を通じて魔力と資金を集める体制を整えてきました。このため、カタスクニにおける娼館は単なる歓楽施設にとどまらず、封印のための魔術的なエネルギーを抽出・転換する役割も持ち、このことが独自の文化を形作ってきたと言えるでしょう。

住民構成は多様で、娼館の経営者と従業員、冒険者、商人、研究者、信仰者、そして裏社会の住人や少数の蛮族たちが混じり合って共存しています。  秩序は陰陽寮直属の治安部隊“ヨモツイクサ”によって維持され、日常の治安は比較的安定していますが、歓楽街では揉め事や暴力沙汰が絶えず、常に危険と刺激が混在しています。それはつまり、冒険者を始めとした者たちの活躍する余地が多く残されているということもであります。

経済面では娼館収益、入宮料、探索による戦利品や冒険者向けの道具売買、観光的要素によって支えられています。  陰陽寮は収入の一部を結界維持に回すと同時に、迷宮由来のルートや遺物の管理を独占することで、都市の富と権威を確保しています。裏市場や非公式な取引も存在し、都市の繁栄には暗い側面も伴っています。

文化面では、瘴気と夜を拒む性質が都市の芸術と習俗にも影響を与えており、夜を模した祭事や瘴気を祓う儀礼や、それらにまつわる職人文化が根付いています。また、多湿な気候と、山を切り拓いて出来たという土地柄から、着物やネオンなどの特異な品が多く存在します。

カタスクニは危険と恩恵が表裏一体となった場所であり、迷宮の報酬を求める者、滅びゆく瘴気に抗う者、欲望と富を求める者が集う、文字通りの眠らない都市です。  訪れる者は享楽と危険のはざまで選択を強いられますが、その混沌こそがこの都市を今日に至るまで息づかせていると言えるでしょう。

▼大雑把に言うと

「迷宮付きのファンタジー吉原」と思っていただくとまず間違いありません。  エセ和風なシナリオの舞台などにどうぞ。

▼運用について

以下で紹介される施設やNPCは一例であり、GMやPLは参加者全員の合意に応じて、ここに記載されていない建物・組織・人物を自由に追加して構いません。  必要に応じて、物語に合わせた形へと発展させてください。

《黄泉の塔》は、複数の迷宮が複雑に絡み合った巨大構造物として扱われます。  そのため、「この階層は剣の迷宮である」「この階層は魔域である」など、シナリオに応じて任意の性質を与えることができます。  また、特定の分類に属さない未知の階層として扱っても問題ありません。

塔内部に現れる蛮族や魔神たちは、原則として「塔の外に出ようとせず、塔の構造や瘴気環境を保とうとする」存在です。  ただし、すべてを統一的に扱う必要はなく、例外の個体や集団を設定しても構いません。

迷宮内部は空間が歪んでいるため、屋内でありながら森・湖・崖などの自然環境が出現することがあります。  この場合、それらは「自然環境として扱う」ことができ、レンジャー技能などを適用して構いません。

【紅蝋燭】は「迷宮内部に長期滞在するPC・NPCが存在しないという理由のための設定」であり、蝋燭の価格や持続時間などは、基本的に細かく定義する必要はありません。  しかし、GMが望むのであれば、「瘴気が薄い中継点が存在する」「塔に適応した者がいる」などの理由を設け、塔の内部に拠点を持つ人物やコミュニティを登場させても問題ありません。

《黄泉の塔》に出現する魔物は、瘴気環境に完全に適応しており、瘴気による悪影響を一切受けません。  一方で、その存在形態は瘴気に依存しているため、塔の外部へ出ると身体が霧散してしまいます。  このため、多くの魔物は外に出ようとはせず、代わりに瘴気の霧を外側へ拡散することで生息域を広げようとします。

▼カタスクニの歴史

カタスクニの歴史について、あまり詳しいことは伝えられていません。  というのも、それらを伝える文書や資料は、殆どが統治機関である<陰陽寮>の管轄下にあり、彼らはそういったものを秘匿するかのように自らの下へ集め、部外者はもちろん、住民や、当の職員たちにすら公開することを拒んでいる為です。  従って以下の概略も、古い住民や冒険者たちの記憶や口伝えによる曖昧な情報をまとめたものとなるため、正確性はあまり期待できません。    言い伝えによれば……この都市の起源は、今からおよそ六十年前にまで遡ります。  当時、ケルディオン大陸東方の山間部は、いくつもの山々が連なるだけの寂れた土地でした。  ところがある晩、山間に突如として、天を衝くかの如き木造の尖塔が姿を現します。  まるで夜の帳の中から抜け出してきたかのように、誰も気づかぬうちに、その巨大な塔はそこに“存在していた”のです。  この土地に残る言い伝えと、後述する呪いの霧などの特徴から、いつしかこの塔は「黄泉の塔」と呼ばれるようになりました。    僅かに存在していた近隣の住民たちや、未踏の迷宮を探していた旅の冒険者たちは、すぐに調査へ向かいました。  塔の内部では奇怪な仕掛けや怪物が徘徊しており、その特徴や魔力から、この迷宮は複数の魔剣が絡む大規模な“魔剣の迷宮”であるという結論が出ました。  実際に、現在でも少量ながら魔力を帯びた武器の発見報告があるため、全てではないものの、迷宮の一部が魔剣によって作られていることは間違いないでしょう。    しかし、ここまでの事実を調べるだけの調査であっても、その継続は困難を極めました。  何故なら、塔の内部は常に、薄紫色の"瘴気の霧"に覆われていたためです。  それは生者の命を奪い、触れる者の心を蝕む禍々しい呪詛の塊で、対策無しに身を晒し続ければ、熟練の冒険者であっても一時間と経たずに斃れてしまう程に強力な、呪いの力に満ちていたのです。    調査を続ける内に、更に厄介な事実が判明します。  霧が徐々に塔の外部を浸蝕していることが確認されたのです。  最初はわずかな量でしたが、時間とともに霧は広がりつつあり、このままでは周囲一帯が瘴気に呑まれ、死の地と化すのは時間の問題であると判断されました。    この危機に際し、当時の冒険者の中でもとりわけ優れた魔術師として知られていた一人の女性――後に「”陰陽頭”ヨモツシコメ」と呼ばれることになる人物――が立ち上がります。  彼女の指揮のもと、冒険者たちは塔の周囲に大規模な封印術を施し、霧の漏出を抑え込むことに成功しました。  封印は成功し、瘴気の拡散は無事に抑えられました。  しかし、封印の維持には常に魔力の供給が必要です。  魔力を絶やせば、塔は再び瘴気を吐き出し、周囲を飲み込んでしまうのです。    この問題を解決するため、ヨモツシコメは一つの奇抜な策を立てました。  塔の前に小規模な居住区――すなわち「供給の街」を築き、 そこを訪れる人々から少しずつ魔力を徴収して、封印の維持に充てようとしたのです。  ですが当初は修行者や研究者など、限られた者しか訪れず、街は閑散とした山中の集落に過ぎませんでした。  土地そのものも、痩せた山肌と鬱蒼とした山林ばかりで、大規模な農業には向かず、人を呼び込むにはあまりにも不便な場所だったのです。    そこでヨモツシコメは、二つ目の奇策として、自分たち以外の冒険者が迷宮を探索できるよう、塔の一部を解放すると同時に、塔のふもとに"娼館"を建て、人々の欲求と金、そして魔力をこの地へと集める仕組みを作り上げました。  一体どのようにして、施設とそこで働く従業員を集めたのか、その一切は全くの不明であり、中には「従業員は全てヨモツシコメの作成した魔法生物や使役する妖精(あるいは魔神や、ヨモツシコメ本人の分身であるという説まであります)である」と伝える資料さえありました。つまり、誰にも分からなかったのです。  娼館の名称もまた、語る者によってバラバラで、その他正確な規模や、そこで客を取っていた者の素性などは判然としません。  ただひとつ、その内容については、誰もが口を揃えてこう言いました――そこでは、どのような不道徳でも赦されていた、と。    結果、二つの策略は見事に的中します。  命を賭けて迷宮に挑み、一攫千金を夢見る者たち。  その稼ぎを手に、束の間の快楽を求めて娼館へ向かう者たち。  こうして街は急速に活気づき、封印を維持するに十分な魔力と資金が集まりました。    年月が経つにつれ、街は堅固な城壁に囲まれ、結界と娼館の二つの柱を中心とした独自の都市文化が形成されていきます。  そしてヨモツシコメは、いつしかこの地の実質的な支配者として、都市の制度・経済・宗教を統べる存在となりました。    こうして、瘴気を封じる結界都市にして、人の欲を受け入れる歓楽の都――すなわち「不夜の郭カタスクニ」が誕生したのです。  この街がなぜ夜を拒むのか、そしてなぜ今も瘴気を封じ続けるのか。  その理由を正確に知る者は、今も陰陽寮の奥深くにしか存在しません。

▼迷宮「黄泉の塔」

「黄泉の塔」は、険しい山々の谷間に突如として出現した木造の巨大な尖塔です。  その姿は荘厳にして不気味であり、まるで山そのものが木と呪術によって形を成したかのようだと伝えられています。  一説に依れば、この塔はいきなりその場に作り上げられたのではなく、「魔術的な仕掛けによって隠されていたものが、強力な術者によって暴かれた」とされていますが、その真偽は神秘の霧に包まれています。

塔の高さはおよそ200メートルに及びますが、内部の空間は外観からの推測を裏切るほど広大で、構造が歪んでいることが知られています。  外部から塔を登り、屋上から内部へと侵入することも可能ですが、最上階から侵入したはずの探索者たちが「さらに上階へと続く階段」を発見したという報告があり、この塔が常識では測れない迷宮的構造を持っていることは明らかです。    内部の造りは基本的に木造ですが、階層によっては自然の樹木や川の流れが確認されており、人工建築と自然の境界が曖昧になっています。  ただし、いかなる階層にも窓は一切存在せず、迷宮内部をぼんやりと照らす光源の由来も未だ不明のままです。  低層階は(あくまで他の階層と比べて、ですが)比較的安全で、既にある程度の探索が進んでいます。  報告によれば、1階層目は湯屋――すなわち銭湯のような構造を持っており、壁や床には美しい木目が残り、清潔な温泉が絶え間なく湧き出しており、脱衣所のような部屋の存在まで確認されています。  しかし、これを管理する人影はどこにも見当たらず、まるで見えざる何者かによって自然に保たれているかのようです。    この塔の最大の特徴は、内部に立ち込める“瘴気”の存在でしょう。  主に紫色の煙として現れるこの瘴気は、非常に強い呪詛の力を帯びており、呼吸するだけでも体内に毒のように侵食していきます。  さらに、肌に触れただけで生命力をじりじりと奪われるため、対策なしでは長時間の滞在が不可能です。  このため、迷宮が発見されてから長い間、探索が進んだのは低階層に限られていました。    このため、探索の当初から、陰陽寮によって「紅蝋燭(べにろうそく)」と呼ばれる特殊なアイテムが開発されていました。  この蝋燭を灯すことで、一定時間だけ瘴気の影響を抑制することが可能となり、これによってようやく中層階の調査が現実的なものとなりました。  とはいえ、紅蝋燭の効果が切れた瞬間、瘴気は再び濃密に充満し、たとえ熟練の探索者であっても命を落とす危険があるため、いまだ塔の全貌は謎に包まれたままです。  尚、紅蝋燭は後述する「関所」や、陰陽寮に認められたギルドに申請することで、各冒険者に対して、計算された必要分が支給されます。

もう一つの特筆すべき特徴として、各階層の最奥に置かれている《手形》と呼ばれる木片の存在があります。  多くの場合、祭壇のような台に安置されているこの《手形》は、グラスランナーの手にかろうじて収まる程度の小さな木片でありながら精巧な意匠が施され、芸術品として収集されるほど繊細な造りをしていますが、魔術的な効果はなく、それだけではただの木の板に過ぎません。  しかし、塔の正門から入れる、「昇降機」と名付けられた部屋の壁に設けられた小さな穴へ《手形》を落とすことで、始めてその特殊性を発揮します。  木片を落としてから数秒後に、「昇降機」の扉が自動的に閉鎖され、直後に各《手形》に対応した階層へ、部屋そのものが移動を始めるのです。「昇降機」の由来も、この機能によるものとされています。  移動は数秒で終わることもあれば最大で20分ほどかかる場合もあり、一般には移動時間が長いほど、複雑で報酬に富んだ階層へと導かれるとされています。

「昇降機」は非常に広く、リルドラケンのような大柄な冒険者の一団でも、全員が余裕をもって待機できるほどの空間を備えています。  また、《手形》は何度持ち帰られようとも、再訪時には何故か必ず補充されているため、最奥に到達しさえすれば、入手に困ることはありません。  《手形》によって案内される階層は、《手形》が置かれていた階層よりも少しだけ難度が高く設定されていることから、《手形》は迷宮が探索者に「次へ進む資格」を与えるための入場券のようなものだと考えられています。  なお、《手形》の模様や形状を完全に再現した模造品を昇降機に投じても、まったく反応しないことが確認されており、迷宮が《手形》に刻まれた情報を何らかの方法で「読み取っている」ことは確実視されていますが、その仕組みや原理は現在に至るまで解明されていません。  同様に、ヒモや魔法などを用いて、一度投じた《手形》を取り戻したり、穴に妖精や【テレオペレート・ドール】で操る人形などを捻じ込んでの調査も、投じた《手形》が瞬く間に焼失したり、妖精や人形が本人にすら理解出来ないまま、術者の元に戻されていたりと、悉く失敗に終わっています。

こうした不可思議さは、黄泉の塔が単なる迷宮ではなく、何かしらの「意志」をもった存在である可能性すら示唆している、と陰陽寮は結論付けています。

▼カタスクニの街

周囲の山林を切り拓いて建設された都市です。建築物の大半は木造であり、厳しい自然環境の中にありながらも、どこか温もりのある街並みを形成しています。    外部との往来は、正門一つのみに限られています。  この門は統治機関である"陰陽寮"直属の戦闘部隊“ヨモツイクサ”によって厳重に管理されており、街への出入りはすべて監視されています。  入城時は簡単な身体検査をする程度で済みますが、街を出る際には、許可を得ずに「黄泉の塔」から持ち出した物品が無いか、などを厳しくチェックされます。    街の構造は、「中央区」である円形広場を中心に五つの“稜(りょう)”が放射状に広がる独特な形をしています。上から見ると、丁度星を象った形になっていることから、都市の形そのものが何かしらの強大な呪術の一部を成しているという話も囁かれていますが、その詳細は全くの不明です。  この星型の各角を「稜」と呼び、時計盤の12時の位置に当たるものを「第一稜」と定め、そこから一筆書に星を描く順番で「第二稜」から「第五稜」までが存在します。    各稜の役割は明確に区分されており、すべて陰陽寮の監督下にあります。  例えば第一稜は政治と行政を司る官庁区で、寮の本部や会議場が立ち並び、第二稜は商業区、第三稜はかつての娼館街を基盤として形成された歓楽街……と稜ごとに全く違う施設が並んでいます。    夕方になると、この地方に昔から伝わる照明である「ネオン灯」が一斉に点灯します。  それらは瘴気を祓う光としても機能しており、街全体を幻想的で妖しい輝きに包み込みます。  とくに第三稜の夜景は圧巻で、金と紫の光が重なり合い、まるで夢と現の境界を歩くような錯覚を覚えるといわれています。    発展の歴史上、冒険者ギルドの受け入れにも積極的で、城内には多数の支部が軒を連ねており、中には「所属する冒険者が全員娼婦」という変わり種まで存在します。  また、半公的に蛮族の受け入れを行っているのも特徴のひとつと言えるでしょう。  この

▼カタスクニの政治

カタスクニの名目上の支配者は、陰陽寮の頂点に立つ"陰陽頭ヨモツシコメ"です。  彼女は結界の創設者にして都市の象徴的存在ですが、その姿を見た者は少なく、近年では公式の場に姿を現すことすら稀になっています。  そのため、彼女が今もなお実際に統治を行っているのか、それとも儀式的存在としてのみ存続しているのかは不明です。    実際の政治運営は、彼女の名のもとに行政を執り行う中間官僚――陰陽助や允と呼ばれる者たちによって担われています。  彼らは法と儀式、そして都市全体の結界維持を職務としており、市政から経済、建築の許可に至るまで、あらゆる決定権を持っています。  一例を挙げると、カタスクニ全体が巨大な結界構造の上に築かれているため、新たな建物を建てる際にも、結界の流れや魔術的干渉を阻害しないかが最も重視されます。  そのため、市民の意見や利便性が考慮されることはほとんどなく、行政は常に「結界の維持」を最優先に判断を下しています。    それにもかかわらず、街の治安は比較的安定しています。  後述する蛮人街などの混成区域を抱えながらも、陰陽寮直属の治安部隊“ヨモツイクサ”による厳格な警備体制が保たれており、大規模な暴動や反乱が起こることはほとんどありません。  また、市民たちの多くも現状に強い不満を抱いてはいないようです。  それは、この街が娼館を中心とした経済構造を持ち、商業や娯楽の規制が極めて緩いという自由な風潮によるものでしょう。  この自由は、良くいえば寛容で活気に満ち、悪くいえば混沌とした無秩序にも通じています。  実際、タチの悪い酔漢や思い詰めた娼館の客による殴りあいなどは頻繁に発生しており、“ヨモツイクサ”もその程度のことでは動かないため、多少猥雑な空気に満ちているとも言えるでしょう。    財政は主に、遊郭や徴収される税や、迷宮探索者から得られる入宮料、あるいは装備の代金などによって賄われています。  さらに、迷宮から発掘された呪物や魔具の売買も重要な収入源とされています。  中には、それらを陰陽寮が密かに裏市場へ流しているという噂もありますが、その真偽を確かめた者はいません。  いずれにせよ、カタスクニの財政は他都市と比べても潤沢であり、外見上は繁栄と安定を維持しているように見えます。

▼カタスクニの軍事

陰陽寮が自衛および治安維持のために抱える戦闘部隊が"ヨモツイクサ"と呼ばれる集団です。  彼等は全員が何らかの魔法を扱える魔術師であり、それが採用の絶対条件ともなっています。  もちろん、魔法だけでなく、武器を用いた白兵戦にも長けた隊員が多数存在しているため、総合的な戦闘力は高い方と見て良いでしょう。  魔術的な技術と戦闘力さえあれば、種族・年齢・素性すらも問われないため、裏社会出身の者や放浪者、私生児などの受け皿ともなっていると言われています。    彼らは「結界の維持」と「秩序の維持」を担う存在であり、任務中は全員、紙製の仮面で素顔を隠すことを義務付けられています。  一説によれば、視線の動きを相手から隠すことで次に行う行動を読み取らせないためであるとか、視線を介した魔法から身を守るために付けているとも言われますが、いずれにせよ、市民や冒険者が職務中の彼らの表情を目にすることは決してありません。    そんな彼等も、オフの日には仮面を外し、一市民として歓楽街に姿を見せることがあります。  職務外の彼らは、不気味な沈黙を守っている職務中と違って、ごく普通に笑い、食し、娼妓に鼻の下を伸ばしたりもしますが、一方で業務内容については、たとえ一言であっても口外することは決してありません。  それは禁令によるものではなく、話そうとしても言葉そのものが喉に詰まる――何らかの封印魔術が施されているためだと噂されています。

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